住宅ローンの支払い中だとマンションは売れない?抵当権を解除する方法とは
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住宅ローンを支払い中のマンションでも売却は可能です。ただ、そのマンションには「抵当権」が設定されていることがほとんどです。通常は、そのマンションを引き渡すまでに売主が住宅ローンを完済し、抵当権を解除(抹消)しないといけません。
この抵当権とはいったい何なのか、どうしたら抵当権を解除できるのか、本記事で解説します。
目次
抵当権とは
抵当権とは、金融機関などでお金を借りたとき、借りた人(債務者)がお金を返済できない事態(債務不履行)に備えて、お金を貸した人(債権者)が、借りた人の所有物を担保にできる権利のことです。
抵当権は建物や土地などの不動産から、自動車や機械、船舶、飛行機といった動産などに設定できます。住宅ローンを契約してマンションを購入した場合は、金融機関が抵当権をマンションに設定する、つまりマンションを担保に入れるケースが一般的です。住宅ローンの種類によっては根抵当権(ねていとうけん)を設定することもありますが、考え方は同様です。
マンションに抵当権を設定していれば、債務者が債務不履行に陥ったとしても、債権者は抵当権を設定したマンションを差し押さえ、競売にかけて現金化できるため、住宅ローンの融資を回収することが可能です。
この抵当権はマンションの所有権が第三者に移っても、抵当権が解除(抹消)されない限り、マンションに残ります。抵当権が設定されたマンションの売却は可能ですが、買い手が購入したあとに競売にかけられてしまう可能性はあります。
買い手からすれば、抵当権が設定されたままのマンションは購入リスクが非常に高く、買いたいと思わないはずです。ですので、マンションを売るには抵当権を外さないといけません。
抵当権を外す方法とは
マンションの住宅ローンを完済しても、抵当権は自動で外れるわけではありません。まずはマンションに抵当権が設定されているかどうか確認する方法を紹介してから、抵当権を外す一般的な流れについて説明します。
抵当権の有無は法務局で確認する
マンションの所有権や抵当権といった権利に関する情報は、全国にある各法務局に赴くか、「登記・供託オンライン申請システム」から申請できます。
法務局に赴く場合は、各法務局に設置されている登記事項証明書(登記簿謄本・抄本)交付申請書にマンションの住所を記入します。その際、登記事項証明書の発行手数料として、600円の印紙が必要です。印紙売り場で印紙を購入して、書類と一緒に窓口に提出すれば手続きは完了です。
交付される登記事項証明書は「表題部」「甲区」「乙区」で構成され、抵当権が設定されている場合は乙区に記載されています。
一方、登記・供託オンライン申請システムから請求する場合は、専用ソフトを使うことになります。詳細は法務省のマニュアルを参照してください。この登記・供託オンライン申請システムを利用すると手数料が500円になり、法務局で申請するより安上がりです。ただし、同システムを利用して郵送される書類は登記官の証明印がないので、正式な書類ではありません。
また、法務局の受付時間は平日の午前8時30分から午後5時15分まで。平日働いているサラリーマンにとっては手続きに行くのが困難な時間帯ですが、登記・供託オンライン申請システムであれば午後9時まで手続き可能です。
抵当権を外すまでの一般的な流れ
住宅ローンの返済が完了している場合は、金融機関から解約証書や解約証明書といった抵当権を抹消するために必要な書類を受け取っており、手続きをスムーズに進められます。
ですが、一般的には住宅ローンの支払いが残っていることが多く、抵当権のあるマンションを売却するときは、以下のような手続きが必要です。
- 1.マンションを売却する旨を金融機関に連絡する
- 2.決済日が決まったら、金融機関に書類の準備を依頼する
- 3.買い手から受け取った売却代金で住宅ローンを完済する
- 4.金融機関から抵当権抹消登記に必要な書類を受け取る
- 5.法務局で抵当権抹消手続きを行う
まずは、抵当権が設定されているマンションを売却することを、債権者である金融機関に連絡します。その際に、マンションの売却代金で住宅ローンを完済するのか、預貯金で完済するのか、またはその両方を組み合わせるのかを明確に伝えておくことが重要です。
どの方法で完済するにせよ、マンションの売却額が完済に必要な額を満たすことが前提条件です。なので、一括査定サービスなどを活用し、売却額の相場をあらかじめ確認しておくことも重要です。
無事に買い手が決まり、売買契約を締結した後は、決済日を金融機関に伝えて必要な書類を発行してもらいます。書類の発行には2週間程度を要するため、早めに連絡しておきましょう。
決済日に買い手から売却代金を受け取った後は、その売却代金で住宅ローンを完済して抵当権を抹消し、買主に登記を移転します。
住宅ローンを完済できたら、金融機関から抵当権を抹消するために必要となる以下の書類を受け取ります。
- 登記済証または登記識別証明情報
- 弁済証書
- 委任状
これら書類を取得した後は書類を持って法務局に向かい、抵当権抹消登記を行います。手続きが完了するまで2週間程度はかかります。なお、登記事項証明書も必要なので、先に説明した方法で発行しましょう(金融機関によっては、上記書類と合わせて登記事項証明書も郵送してくれます)。
抵当権抹消登記は司法書士に代理してもらえる
抵当権抹消登記は速やかに行う必要もあり、不動産会社が提携している司法書士に代理してもらうのが一般的です。
抵当権抹消登記には、登録免許税として1件あたり1000円かかります。マンションの場合は、土地1筆と建物1件でそれぞれ所有権を有しているのが一般的で、不動産が2つとカウントされます。つまり、2000円が必要になります。
そして手続きにかかる印紙などの実費が3000~5000円かかり、司法書士への報酬は人によりけりですが、相場としては1万~2万円ほどです。
司法書士に依頼せず、自分で手続きできれば節約につながります。自分で手続きする場合は、金融機関が発行する書類のほか、免許証などの本人確認書類、印鑑証明書、すでに住所を新居に変えていたら住民票または戸籍の附票が必要です。
抵当権抹消登記も登記事項証明書と同様、法務局か登記・供託オンライン申請システムで申請できます。
法務局では、抵当権抹消登記申請書に必要事項を記入する必要があります。なお、抵当権抹消登記申請書は法務局のWebサイトからダウンロードも可能です。
もしも時間に余裕があるのなら、司法書士に依頼せずとも自分で手続きしてみてもよいでしょう。
マンションの売却代金で住宅ローンの完済が見込めないときは
住宅ローンの残債は、マンションの売却代金で補うのが一般的ですが、それでもローンが残っている場合は以下の方法を活用します。
- 預貯金
- 住み替えローン
- その他ローン
預貯金で残債を補う
預貯金に余裕があるのなら、そのお金で住宅ローンを完済するのはシンプルでよい解決策です。しかし、余裕もないのに預貯金を崩すと、住み替えに必要な頭金を払えなくなったり、生活資金が不足したりする可能性があるので、資金計画を十分に検討しましょう 。
住み替えローンで残債を補う
マンションの売却代金を差し引いてもまだ残債があるとき、その残債と新居の購入費用をまとめてローンとして借りる方法が「住み替えローン」です。その場をしのぐことはできますが、当然ながら返済総額が大きくなります。
住み替えローンを利用する際は、「マンションを売却したお金」と「住み替えローンで借りたお金」で、残債を一括返済します。そのため、「住み替えローンの融資日」と「マンションを売ってローン残債を一括返済する日」を一致させる必要があります。
つまり、マンションが実際に売れなければ、新居が決まっていても住み替えローンを利用できません。そんなとき、買い手との間で締結する売買契約書に「買い換え特約」を付けておくのは1つの手です。
買い換え特約とは期限内に今住んでいるマンションが売れなかったとき、新居購入の契約を白紙に戻せる特約です。これは売り手が解約しやすくなる内容であり、買い手がこの特約を認めてくれるとは限りませんが、話し合いで取りつけてもらえることもあります。
その他のローンで残債を補う
「つなぎローン(つなぎ融資)」と「無担保ローン」で残債をカバーする方法もあります。
つなぎローンとは、住宅ローンの残債を返済するために借りるローンです。ただし、つなぎローンは金利が高く、融資事務手数料といった諸費用がかかるうえ、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)も適用されないので利用する際は注意しましょう。
もう一方の無担保ローンとは、融資を受ける際に担保を必要としないだけでなく、審査から融資までスムーズというメリットを有しています。一般的な融資なので銀行でなくても取り扱っていますが、つなぎローンと同様のデメリットも抱えています。
抵当権を外すためとはいえ、これらのローンを利用すると返済負担が大きくなります。ほかの方法も組み合わせることはできないか、検討することをオススメします。
なお、2019年12月31日までに住宅ローンが残っているマンションを売却して損失が生じたら、「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が適用されます。
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例とは、売却時の損失をその年の所得から控除できる特例です。控除しきれなかった損失は、同じ特例を用いて3年間繰り越せるので、適用条件が合えば利用したいところです。
住宅ローンの返済が困難で売却する場合
住み替えるためにマンションを売るのではなく、住宅ローンの返済が困難で売却を検討している場合は、ここまでに紹介した方法ではなく、「任意売却」や「競売」を利用することになります。
任意売却とは
任意売却とは、債権者である金融機関の同意を得て、抵当権が設定されているマンションを売却し、その売却代金で残債の返済にあてる売却方法です。
マンション売却後も借入金は残りますが、売却代金の分だけ負担は軽くなりますし、任意売却だと抵当権を解除してもらえます。一般的なマンション売却と同じく、買い手を見つけてから売るので、納得できる価格になりやすいのもメリットです。また、売却代金から引っ越し費用の一部を控除してもらえる可能性もあります。
ただし、住宅ローンを一定期間以上滞納することが任意売却の前提条件ですし、債権者である金融機関の協力も必要です。さらに、返済を延滞した事実に変わりはないので、信用情報機関に掲載され、一定期間は金融機関から借入できなくなる可能性もあります。
競売とは
競売とは債権者である金融機関が、住宅ローンを滞納している債務者のマンションを、裁判所を通して差し押さえられたうえで売却する方法です。任意売却と同様、売却代金で返済にあてられます。
競売は裁判所が手続きするため、時間も費用もかかります。また、競売情報はインターネット上や新聞などで公開され、競売に至る事情などが公表されることになります。一方、売却金額は多くの入札があれば任意売却よりも高くなることもありますが、人気のない物件だとなかなか入札されないこともあります。
さらに、競売の場合、マンションが落札されれば退去させられることになりますし、引っ越し費用は自分負担になるといったデメリットもあります。競売代金で返済しきれなかった債務は、当然ながらその後も返済を続けることになります。
競売は法律に基づいて行うため、任意売却と比べると融通が利きません。競売は返済のための最後の手段になります。住宅ローンの返済が厳しくなってきたと感じたら、早めに金融機関に相談しましょう。
まとめ
住宅ローンを完済していないマンションは、抵当権が設定されています。抵当権が設定されているマンションは、抵当権が実行された際にリスクが伴うため、売買にあたって抵当権抹消の手続きが必要となります。
そのためには、住宅ローンを完済する必要があります。
住宅ローンを完済するには「マンションの売却代金で補う」ほかに、「貯金を取り崩す」「住み替えローン」「つなぎ融資や無担保ローンを利用する」方法があります。大きな資金が動くことになるので、間違いが起きないように資金繰りや手順について、十分に検討する必要があります。